形状の省察と色彩の焼殺

Shadow

10年近く写真を撮ってきたけれど、満足できる写真を撮れた事がない。

才能がない事は分かっているけれど、写真を撮るのは好きだから、一枚くらいは死ぬ前に満足できるものを撮る事を目標にしている。

その一心で (もしくは物欲を解消する為に)、写真をたくさん見る事から始まり、写真雑誌を読んだり、広角から望遠まで色んな画角のレンズを揃えてみたり、父が使っていたフィルムカメラで撮ってみたり、マニュアルフォーカスレンズを使ってみたりしてきた。どれもある程度は身になっている様には思うのだけれど、技術的或いは知識的な成長だけで、センスが磨かれているとは到底思えない。

そんな事を何年も考えてきたのだけれど、縁あって素敵な iPhone の写真用 APP に出会う事が出来、目標に近づけるのではないかと思えるようになってきた。

その APP、Camera1 は白黒写真専用のアプリケーションなのだけれど、写真の基本である「露出」「フォーカス」「コントラスト」を手動で合わせる事が出来る。言い換えれば、写真を撮る人のプリミティブな部分に訴えかけるアプリケーションなのだ。

iPhone でモノクロ写真ばかり撮るようになったのがきっかけで、デジタル一眼レフでもモノクロームモードで暫く撮ってみる事にしてみた。RAW で撮っていれば、現像する時には、カラーにする事も出来ると確認出来たから躊躇はなかった。つまり、例えば夕焼けの素晴らしい色を撮ろうとするたびに設定を弄る必要がない。シャッターチャンスを逃すのを防げもするけれど、ぼくにとっては煩わしくないという方が効果が大きい。

モノクロで撮る事のメリットは、色という情報を棚上げしておく事で、写真のその他の要素である、被写体の形状、構図や画角、被写界深度など、その他の情報を見つめるのに回せるリソースが増える事だ。デジタル一眼レフで撮る時、癖で写真を撮ったらカメラの背面のディスプレイで、すぐにプレビューして確認してしまう。その時にそれらの要素をチェックできるから、次の一枚を撮る時に活かせられる。

暫くそんな事を続けていたら不思議な事が起こった。ファインダーから覗いている時にも、風景が白黒で見えるような気がするようになったのだ。

ぼくが普段使っているカメラは光学ファインダーだから、もちろん実際にはそんな事はあり得ないのだけれど、頭が白黒として処理している。上に挙げた、色以外の写真の要素に注目出来る様になってきたという事なのだろうか。

もっと撮り続ければ、普段から白黒に見える様になるのだろうか。その時は精神科か眼科に行った方が良いのだろうか。

自分の写真を客観的に見る事は難しい、少なくとも今のところは。数年後に見返した時に、2016年から撮る写真が変わっていたら面白いと思う。